月と6ペンス

人間の奥底から湧き上がるなんだかわからないものすごい力、よくわからないけどただただその力に突き動かされるしかないという、そういう力の存在を書いてしまうなんてなんてことだろうと思った。そこには滑稽さも冷酷さも情欲もが渾然一体となっていて圧倒される。
ストリックランドのような人間は冷酷非道の人でなしだとも思うけれども、その貫徹した(いや、貫徹なんてものではなくただ突き動かされたというべきかもしれないけれど)絵への執着ぶりは畏敬の念をおぼえる。そういうものが世の中の大半の人のモチベーションになればいいと思う。不平不満なんてものがこの世からなくなってしまうのだ。人々はだただただやりたいことをやるだけ。

月と六ペンス (講談社文庫)

月と六ペンス (講談社文庫)